すずめ日記
「凄いお父さんだね!優しいお父さんだよね」

言いながら倉本さんは眼鏡をはずし、おしぼりで顔を拭いた。


「祐ちゃん、君ならきっと胸を張って帰れるよ!」
倉本さんは、そう言ってスッと右手を差し出した。

「頑張って!!」

倉本さんと握手をしながら父から教わった、話を思い出した。


「なぁ~祐。鎌倉時代、今から約800年くらい前にはな……」

分厚い経典を手に父の講義。


「鎌倉から京都へは歩いて行くしか手段がなかった。
鎌倉を今日、出発して1日五里。そうだな~20キロ歩いたとしても京都までは、12日もかかる。例えば……京都の月を観に行こうと11日まで歩いて疲れたからキツいからと もし、もうやめたと歩くのを止めてしまったら京都へは辿り着かないばかりか、それまで辛い思いをして歩いてきたことも費やした時間も旅費も何もかもムダになってしまう。もちろん京都の月を観ることもできない」
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