クールなお医者様のギャップに溶けてます
院長の側に医師が立った瞬間、女子たちがざわつき始める。

「何?そんなにイケメンなの?」

ちょうど死角で見えない私は背の高い花絵に聞く。

「うん、あれはかなりのイケメンだわ。芸能人みたい。」

「うわぁ♡目の保養になりますねぇ。」

「え?こうちゃん、まだいたの⁈」

うっとり見つめてるこうちゃんがいた事に驚いたけど、院長が紹介を始めたので静かにする。

「今日から前任の医師の後を担当してもらう神野聡先生です。専門は前任医師と同じ消化器内科。今日から早速内視鏡検査に入って貰います。では神野くん、一言。」

「今日からお世話になります神野です。よろしくお願いします。」

低くて良い声なのは分かった。
でも、見えない。
目の肥えた花絵が言うイケメンがどんな感じなのか見てみたいっ。

踵を上げ、精一杯背伸びをすると見えてきた。

背は院長と頭一つ違うから大体180センチ位。
結構高い。

身体は細身で白衣のボタンをきちんと留めている。
うん、これは好感が持てる。

サラサラの黒髪に一重の切れ長な目。
すっと通った鼻筋と薄めの唇。
一言で言えばクールビューティーだ。

でも、あの顔…どこかで見たことがあるような…。

顔を凝視しながら考えていると神野先生と目が合った。
ドキっと心臓が跳ねる。
少しだけ先生の目が大きく開いたその瞬間、思い出した。

「…花絵、私、先に戻る。」

「え?」

花絵が止めるのも聞かず会議室を後にした私は一気に階段を登り、とりあえずトイレに隠れた。

まさかあの医者がこの病院に赴任してくるなんて…。

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