クールなお医者様のギャップに溶けてます
力が抜けていく。
その場に座りこんでしまった。

そこから何か話していたようだけど、会話は耳に入ってこない。

お弁当を食べずにナースステーションへ戻る。

聞かなきゃ良かった…。

「あれ?亜樹早かったね、って何?その覇気のなさは?」

背中は猫背になり、目も虚ろになってるから覇気がなく見えるんだろう。
自分で分かってる。分かっているけど…ダメだ。

「ちょっと来て。」

花絵に引っ張られて当直室へ連れて行かれる。

「何があったの?」

花絵は私をベッドに座らせると温かいお茶を淹れてくれて、手渡してくれた。
その優しさに涙が出そうになる。

「私、失恋した。」

「はい?」

「事務所の子が先生に告白してたんだけど、断られて、じゃあ私なら良いのか、って事務所の子が聞いたら関係ない、って。」

「はーあ?何それ。」

「あー、もうやめた。先生、元々気になる人がいるって言ってたんだもん。実らない恋だったんだよね。大体、ものすごーーーく好きって訳じゃないし。ドキドキする程度だし!」

「亜樹…。」

そばに寄り添ってくれる花絵が背中をさすってくれる。
強がってみたけど、こんなに苦しくなる位、私、先生の事が好きになっていたんだ。
何で…何でよ…。何でよりによって先生を好きになっちゃったんだろう。
やっぱり先生の気になってる人にはかなわないんだよ…。
こんな気持ちを味わうなら先生と会わなきゃ良かった。嫌いなままでいたかった。

後悔とともにこぼれ落ちそうになる涙をグッと堪えて深呼吸すると少し落ち着いてきた。

「亜樹と神野先生の問題だからとやかく言うつもりはないけど、本当にいいのね?」

これ以上先生を想っても辛くなるだけだもん。

大きく頷くと花絵も頷いてくれた。
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