彼の濡れた髪
驚き固まっている私を余所に、ユキは食器カゴからグラスをひとつ掴んだだけ。
バクバクとした心臓をさりげなく左手で抑えてユキを見ると、その視線に気付かずに、綺麗な腕でコップを持ち上げ喉を鳴らす。
まだ拭いきれてない雫が首筋を伝い落ちていく光景に目を奪われる。
ただ、お風呂上がりに水を飲んでるだけなのに。なんでそんなに色っぽいの!
目のやり場に困って顔を背けると、ユキがコンッと私の後ろの調理台にペットボトルとグラスを置いた。
自然と私もそこを見て、顔を上げたとき――。
「さっきの。寝ぼけててみてなかったわけじゃないよ?」
その視界はさっきカズくんにされたときと類似したもの――。
けれど、格段に比じゃないオーラ。
気付いたら、片手はさっき置いたグラスの手前に置かれ、もう片方は、キッチン上の収納扉の取っ手を掴んでるよう。
カズくんとはまだ、触れることのない距離感があったけど、今は違う。
お互いの身体がちょっと触れ合っていて、それは決して押されてるというほどではないのにそう感じてしまう。
彼の身体から熱を感じ、それに感化されるように私まで一気に熱くなる。
見上げて固まったまま、見える先にあるユキの整った顔。
頭に被っていたタオルがふぁさっと肩に滑り落ちたのと同時に。
――ポタッ。
まだ滴る前髪からの雫が私の頬を濡らす。
その冷たい一滴が、ぞわりと全身を粟立たせる。
だけど、寒気なんか一切与えず。ただ、ぞくりとした感覚と共に、沸騰させるほどの熱を頭からつま先まで送りこまれる。
「ユ、キ……」
普通にしてたって、仕事中のぼさぼさの髪にメガネの姿だって。
どんなユキだって、心臓壊されそうになるのに。
なのに、そんな濡れた髪で、濡れた目で。
上気させた頬で、真剣な顔をしてこんなふうに追い詰められちゃったら。
バクバクとした心臓をさりげなく左手で抑えてユキを見ると、その視線に気付かずに、綺麗な腕でコップを持ち上げ喉を鳴らす。
まだ拭いきれてない雫が首筋を伝い落ちていく光景に目を奪われる。
ただ、お風呂上がりに水を飲んでるだけなのに。なんでそんなに色っぽいの!
目のやり場に困って顔を背けると、ユキがコンッと私の後ろの調理台にペットボトルとグラスを置いた。
自然と私もそこを見て、顔を上げたとき――。
「さっきの。寝ぼけててみてなかったわけじゃないよ?」
その視界はさっきカズくんにされたときと類似したもの――。
けれど、格段に比じゃないオーラ。
気付いたら、片手はさっき置いたグラスの手前に置かれ、もう片方は、キッチン上の収納扉の取っ手を掴んでるよう。
カズくんとはまだ、触れることのない距離感があったけど、今は違う。
お互いの身体がちょっと触れ合っていて、それは決して押されてるというほどではないのにそう感じてしまう。
彼の身体から熱を感じ、それに感化されるように私まで一気に熱くなる。
見上げて固まったまま、見える先にあるユキの整った顔。
頭に被っていたタオルがふぁさっと肩に滑り落ちたのと同時に。
――ポタッ。
まだ滴る前髪からの雫が私の頬を濡らす。
その冷たい一滴が、ぞわりと全身を粟立たせる。
だけど、寒気なんか一切与えず。ただ、ぞくりとした感覚と共に、沸騰させるほどの熱を頭からつま先まで送りこまれる。
「ユ、キ……」
普通にしてたって、仕事中のぼさぼさの髪にメガネの姿だって。
どんなユキだって、心臓壊されそうになるのに。
なのに、そんな濡れた髪で、濡れた目で。
上気させた頬で、真剣な顔をしてこんなふうに追い詰められちゃったら。