この甘き空の果て
三週間後の西国空襲の日。
自国に爆弾を落とされまいと、空で待ち構えていた敵は、容赦なく、弾の雨を降らせてくる。
そんな暗雲ような弾幕を、わたし達の機体が、なんとかすり抜けて飛びだした途端。
視界がいきなり蒼に開けた。
「なんて、綺麗!」
「そうだろ? これが俺の世界だ、楼羅!」
一人乗り用を無理やり二人乗りに作りかえた狭い操縦席の中で、わたし亮と一緒に、空を見た。
天気は快晴。
一欠片も雲のない空は海に交わり、視界の全部を蒼く染めあげていた。
その美しさに、見惚れるわたしを見て亮が笑った。
「楼羅、俺さ。
このまま、いつまでも、飛んでいたいよ」
「うん」
「今度生まれ変わったらさ。
爆弾じゃなく、郵便積んで飛びたいな。
ラブレターが一杯詰まったヤツ。
その時も、楼羅は俺に、飛行機を作ってくれる?」
「うん。絶対。
でも、郵便機は蒼じゃないから亮はもう『蒼王』とは呼ばれないね」
「その時は、赤のキューピッドって呼ばれるつもり。
……似合う?」
「似合う、似合う!
蒼王より、ずっと可愛いいし!」
二人でクスッと笑った時だった。
一発の弾丸が、終わりを告げた。
一面蒼の世界で、機体を敵機に打ち抜かれ、わたしたちは紅蓮の炎に包まれる。
「愛してる、楼羅。 また、空で会おうね」
愛しい人の最後の声に、わたしは、何度もうん、と頷いた。
〈了〉


