天狗娘は幕末剣士
それからすぐに、私達は屯所を山南さんに任せ、それぞれの持ち場へと向かった。
「局長、おそらくこっちが当たりです」
池田屋を調べていた私は、局長にその事実を伝えた。
「そうか、ご苦労。
では杏子くん、早速で悪いが、トシ達へ応援の伝令を頼めるか」
「伝令は、先程別の監察が向かいました」
「そうか、ありがとう。
……会津藩からの返事も、まだ来ていないか?」
「……はい、それも、まだ……」
俯き気味にそう言うと、近藤さんも少しだけうねり声を上げた。
「どうするんですか、近藤さん」
総司の問いに、近藤さんは何も言わない。
ここにいるのは、わずか11人。
それに対して、池田屋にはおそらくもっと多くの武士がいる。
下手したら、死人がでてしまうかもしれない。
だから、近藤さんは突入するか迷っているんだと思う。
「近藤さん……」
私が思わず名前を呟くと、近藤さんはようやく口を開いた。
「仕方ない、俺達だけで行くぞ」