天狗娘は幕末剣士
「……温かい……」
大丈夫、斎藤さんは、ちゃんと生きている。
それが分かった途端、私の目からまた涙が溢れた。
「ん……」
すると、斎藤さんがゆっくりと目を開けてきた。
「……杏子……」
顔をこちらに向け、彼は私の名前を優しく呼んだ。
「斎藤さん……」
「杏子、お前……泣いているのか?」
そう言って、斎藤さんは私の涙をそっと拭ってくれた。
「……泣いてませんよ」
そう言って、私は無理やり笑顔を作った。
すると、斎藤さんはフッと笑った。
「嘘をつけ。
目が濡れている」
斎藤さんは、私の目元をするりと撫でた。