夜が明けたら、君と。
「勝手にいなくなるなよ」
「お、起こしてしまいましたか」
「なんで急に敬語なんだ」
だって、もう酔ってないし。
夜の勢いと朝を一緒にしないでほしい。
「昨日は失礼をしまして。あの、で、帰ろうかと」
「帰るなよ」
「いやでも、不倫の関係とか続ける気ないんで」
彼の左手をちらりと見る。今はもう収まっていないけれど、昨晩ここにちゃんと指輪があったことを私は覚えている。
「……見てたのか」
「バッチリ」
「俺に妻は居ない」
「白々しい嘘つかれるといい思い出に汚れがつくんでやめてください」
「いい思い出?」
彼は眉をツンと上げたかと思うと、口元を綻ばせて近づける。
ちゅ、と小さなリップ音。
昨日はもっと凄いことをしたはずだけれど、朝日の効果かこれだけで妙に恥ずかしい。
「じゃあ俺のことは気に入ったわけだな?」
「そ、それは」
そうだけど。
でも嫌なんだって不倫は。
なのにこの男は、どんどん私との間を詰めてくる。
両側を腕に抑えられてまさに逃げられない状態だ。
「正確には、俺の妻はもうすぐいなくなる」
「は?」