『本気の恋愛』始めましょ
「ごめん。先に戻る」


 私は計都の傍から逃げるようにすり抜けると会議室を後にした。今の私は顔が真っ赤だと思う。耳が熱いし、どうしようもない。


 このまま営業室に戻るわけにもいかずロッカールームに駆け込むと、何度も何度も深呼吸する。でも、さっきの情景が鮮明に目蓋の裏に焼き付いていて、計都の綺麗な顔が私の前にチラつく。


『計都が私のことを好き?』


 計都の真剣な顔を思い出すと、もっと顔が熱くなる。私は計都を嫌いではない。同期としていつも一緒に居たし、計都には彼女がいるとずっと思っていたから、恋愛対象として見たことはない。


 何とか自分の気持ちを落ち着けて営業室に戻ると、計都は席には居なかった。


 ホッとすると、空調がいいわけでもないのに、空気が美味しく感じる。

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