『本気の恋愛』始めましょ
 瞬きを忘れたかのように目を見開いて動かすことさえ出来ない私はただ、計都の次第に強くなる香りで身体を固めてしまう。


「他の男なんか見るな。俺だけを見てろ」



 甘く囁かれた言葉。距離を縮める唇。


 計都は嫌いじゃない。同期としては好きだと思う。でも、男として見たことはない。恋愛対象としてみたこともないし、それに計都も付き合っていると思っていた。人間は緊張しすぎるといらない思考は溢れだす。そんな頭の中で色々と駆け巡る私の前に計都の綺麗な顔が近づいてくる。


 距離がない。もう、くっついてしまう!!!!


 距離が近づくのを止めたのは計都だった。


 私と計都の唇は重なることはなかった。私の足はあまりにも驚きすぎて自分の身体を支えられず、壁にズルズルと滑り床に落ちてしまう。


 急に周りの空気が新鮮度を増した気がする。計都の腕に包まれている空間は空気が薄い。


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