リライト
机の上に置いた高崎さんのバッグが買い物袋に押されて、ゆっくりと傾いていく。倒れそうになったバッグに触れようとして、光を放つものが目に留まった。
雫の形をした金色のキーホルダーに付いた鍵。
どこかで見たことがあるような気がする。
私は迷うことなく鍵を手に取った。
ひやりとした滑らかな感触が、記憶の深いところを刺激する。確かめたくて目を閉じてみたけれど、一面の闇に包まれた脳裏には何にも浮かんでこない。
とても大切なもののような気がするのに。
「まだ、覚えてる?」
声とともに、脳裏に光が差し込んだ。
振り向いたら高崎さんが悲しい目で私を見ている。
「ごめんなさい、バッグが倒れそうになって……」
鍵を差し出しながら違和感を覚えた。
今、『覚えてる』って言った?
「高崎さん、今……何て……」
「覚えてる? って聞いたんだ」
胸に突き刺さるような声。
答えられずにいるうちに高崎さんが腕を掴んだ。手から鍵がこぼれ落ちていく。