リライト

ドラッグストアから高崎さんの店は歩いて五分もかからない。今まで買い物に来た時に一度も会わなかったのが不思議なほど。



もう子供は寝静まっているような時間の住宅街の中、お客さんのいない真っ暗な店内を見るのは初めてだからか、緊張してしまう。



ふいに固いものが手に触れて、思わず体が跳ね上がった。



「ごめん、僕について来て」



高崎さんの声が聴こえて、手を引かれる。高崎さんの手は思っていたよりも固くて温かい。
お菓子を作ってる人だから、もっと柔らかいと思っていたのに意外。



片手で事務所の鍵を開けて、照明のスイッチを入れる。真っ白な光が視界に飛び込んで目眩がしそう。
高崎さんは慣れた足取りで、机の上にバッグと買い物袋を置いた。




「ここで待ってて、持ってくるから」



と言い残して、高崎さんは厨房へと行ってしまった。



取り残された私は事務所を見回しながら、高崎さんに握られた手に触れた。まだ握り締められた感触が残っている。



ぞわりと胸の奥がざわめくのは何故だろう。


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