俺様魔王の甘い口づけ
「人間だ」
「本当だ、人間だ」
「こんなところになんで人間が」
「そんなことはどうだっていい。いい土産ができたぞ」
コソコソと、内緒話をする声が聞こえる。
よかった、人がいたんだ!
泣きつきたい感情を押さえながらその声の方を向くと、振り向いたことを後悔した。
口は尖り、まるでオオカミのような大きな口。
それなのに、二足歩行の化け物のようなものが二人立っていたのだ。
「ひぃっ」
なんなの、なんなの、なんなのよ!
着ぐるみ?
それにしては、リアルだし、趣味悪いし。
なにより、気持ち悪い!
「やばい、気づかれたぞ」
「気づかれたな」
「どうする」
「どうする」
「浚ってしまえ」
「ああ、そうしよう」
抑揚のない感情のこもらない口調で話すから、その内容が頭に入らない。
気づいたときには、その二人の化け物に私は羽交い絞めにされ、連れ去られていた。
「いやああああ!」