俺様魔王の甘い口づけ
「芽衣子さま!」
階段を駆け下り、城を出る瞬間私を呼ぶ声。
扉が閉まる瞬間に見えたのは私を呼ぶハンスの姿だった。
負ってこようとしていたけど、勇者が放った剣が天井のシャンデリアの鎖を切り、ハンスの前に落ちた。
私は勇者に連れられ森に入りひたすらに走る。
その途中で出会った魔物たちは、勇者が薙ぎ払う。
森を抜け、枯れた大地をひたすらに走ることどれくらいだっただろう。
少しずつ建物の姿が見え始めてきたころ、ようやくその足を止めた。
「はあ!…はあ!…一体…なんなの…」
息を切らせ、肩を上下に揺らす。
息が苦しい。
「はあ…。ごめん…。でも、俺、君を助けたかったんだ」
まっすぐ、汚れのない瞳を向けられドキッとする。
ルイとは違う、正義感に輝くその瞳。
「助けたかったって、どういうこと?」
「君、魔王に捕らわれてたんだろう?生きているのが驚きだったけど、人間である君がいていい場所じゃないから」
私は、その言葉に思いを馳せる。
捕らわれていた。
確かに、非常食だと言われた。
だけど…。