めぐりあい(仮)





「お前が口挟むことじゃねーだろ」




そう言う田山さんを、


じっと見つめる蓮哉。


そして。





「牧瀬、お前はいつもいつも…」




「めんどくせーな、離せっつってんだろ」





蓮哉はそう言うと、


無理矢理田山さんの手を


引っ張った。


強引に離れた彼とあたしの手。






「牧瀬、お前今何て言った?」




「めんどくせーって言いましたけど?」




「誰に向かってそんな口聞いてんだっ!」





田山さんはそう言うと、


蓮哉の首元を掴み、


頬を拳で殴りかかった。





「蓮っ…!」




予想もしてなかった出来事に、


あたしはただただ驚くばかり。


一緒にいた人たちは田山さんを


押さえようとするが、敵わず、


田山さんは蓮哉を数発殴った。


蓮哉は逃げるどころか、


挑発するように田山さんに立ち向かう。





「蓮哉…やめてっ、」




あたしの声なんて、


おそらく耳に届いていない。


どうしよう。


あたしのせいで、


こんな目に合っている。


どうしたら、いいの。


どうしたら…。






「蓮っ…」





怖くて自然に涙が出る。


蓮哉が死んじゃう。


そう思って体が震えた。


そこにパトカーのサイレンが聞こえ、


気付けば目の前に警察が数人いた。





「君、危ないからこっちに来なさい」





蓮哉を助けようと近くにいたあたしは、


1人の警官に引っ張られる。


そして数人の警官が蓮哉と田山さんを


引き離し、事情を聴いていた。






「君にも事情を聞かせてほしいから、署までいいかな?」





「……はい」





誘導されるがままにパトカーに乗り、


あたしは警察署に連れて行かれた。


到着するなり、それぞれ別の部屋に


連れて行かれ、事情聴取。


通りかかった人の通報で、


警察がかけつけたらしい。





「身元引受人の方が来られるまで、外のイスで待っててくださいね」





簡単に状況を話し、


小さな部屋を出た。


静かな廊下にローファーの音が響く。


待つように指定された場所には、


傷だらけの蓮哉と手当てをする


婦人警官がいた。





「はい、これでいいでしょう」





お母さんくらいの年齢の人で、


すごく優しそうな警官。






「女の子を守ったんですって?」





「いや、別に…そんなかっこいいもんじゃないです」





少し離れた場所で会話を聞く。


久々に聞く穏やかな蓮哉の声が、


すごく愛しくてたまらなかった。





「でも手を出さなかったのは偉いわね」




「ビビッて出せなかっただけっすよ」




「あら、ビビるなんて、見かけによらないわね」





殴ろうとしたのを、


我慢していたのがすごく伝わって来た。


上司だから、手が出せなかった。


だけどあたしがいたから、


早く帰らせようとした。


結果的に殴られたけど、


別に喧嘩したかったわけじゃない。


蓮哉はあたしのせいで殴られた。


それは自分でも分かってた。






「じゃあ、少し待ってなさいね」




「すいませんでした」





婦人警官が去ったのを確認して、


あたしは蓮哉の元に行った。


長イスに腰をかけている蓮哉は、


ぐったりと疲れているようで。






< 93 / 152 >

この作品をシェア

pagetop