めぐりあい(仮)
突然悠太郎は、
あたしの腕を引き、
自分の車に押し付ける。
背中に少し痛みを感じ、
冷たさが体を包む。
じりじりと近付く距離。
逃げ場がないこの空間で。
「説明してよ」
「悠太郎、待って…」
「待てない。説明してみてよ。どうしたら、2人ともこんなことになる?」
いつかの悠太郎の家で、
蓮哉のことを好きかと聞かれた時。
あの時と同じ顔をしている。
いつも穏やかな悠太郎が、
蓮哉のことになると、
すごく怖い顔になる。
「言ってみろよ」
「悠太郎…、」
「答えられない?」
立て続けに聞いて来る。
何て答えたらいいの。
何を言えばいいの。
「悠太郎、落ち着いて…っ」
「答えろよ。何でいたんだよ、妃名子っ!」
目の前で怒鳴る悠太郎に、
驚いて怖くて声が出なくなった。
ごめんなさい。
悠太郎まで怒らせてしまうなんて、
考えてもみなかった。
「木嶋さんっ…」
悠太郎との距離が急に空き、
代わりに目の前にあるのは、
大きな背中。
少し息を切らしているのか、
漏れる息がすぐ近くで聞こえる。
「蓮、退け」
「嫌です。退きません」
夏のバーベキューの時のように、
蓮哉はあたしと悠太郎の間に入り、
あたしを庇うように立っている。
去って行ってしまったと思った蓮哉が、
目の前にいるのが夢のようだ。
「何でいつもこいつを責めるんですか」
「蓮には関係ない」
「もっと優しく出来ないんですか?」
「蓮…何言ってる?」
2人が言い合う。
あたしは蓮哉の後ろで涙を流す。
出来るなら今すぐ蓮哉に寄り添いたい。
あなたが好きですと、
縋りたい。
「妃名を責めるなら、俺に言えばいいじゃないですか」
「蓮、これは俺と妃名子の…」
「妃名子は何も悪くない。これ以上こいつを責めるなら、木嶋さんの傍に置いておけない」
帰るぞ。
蓮哉はそう言うと、
あたしの手を握り、
悠太郎の前を立ち去った。
繋がっている手から、
あたしの想いが全部伝わればいいのに。
蓮哉の思いが全部知れたらいいのに。
何でこんなに愛しいんだろう。
何で蓮哉がいいんだろう。
口も悪いし、不器用だし、
優しい時なんて米粒くらいの
大きさくらいしかない。
意地悪だし、横暴だし、
何かにつけて命令してくるし。
なのにあたしは、
いつの間にか蓮哉を好きになっていた。
意地悪な蓮哉も、
不器用な蓮哉も、
優しい蓮哉も、
全部全部愛しい。
「蓮哉…」
ふと頭に過ぎる。
さっき蓮哉が言った、
もう会わないという言葉。
電話も出ないし、
会うこともない。
そんな言葉を冷たく言い放っておきながら、
こうやってあたしを庇ってくれる。
優しくしてくれる。