めぐりあい(仮)
「どれが本当の蓮哉なの……?」
冷たく突き放したかと思えば、
優しく手を差し伸べてくれたり。
何をしてるのかなって、
考えるだけで苦しくて。
会いたいなって、
恋しくて。
毎日あなたを、想ってる。
「好きなの…蓮哉…」
自然と口から出た言葉。
嘘じゃない。
この想いは正直なあたしの心。
「は?」
そんなあたしとは裏腹に、
蓮哉はあたしを見ることなく
握った手を振り払った。
「何?好きって?」
「そう。あたし、蓮哉のこと…」
好きになったの。
そう言いかけたあたしは。
「それ、勘違いだろ」
蓮哉の一言で、言葉を失った。
あたしのこの想いが、
勘違い?
「木嶋さんに責められて、気持ちが不安定になってるだけだろ」
「違っ…」
「ちゃんと考えろよ」
そう言ってあたしを見た蓮哉は、
冷たい表情を崩すことなく
あたしを視界に入れた。
どうしてこうなったのか、
全く分からない。
どうして、蓮哉は、
こんなに冷たいのだろう。
「お前が俺を好きなわけない」
何を言っても、聞く耳を持たず。
ことごとくあたしの気持ちを
否定した後。
「俺、用事あるから」
何事もなかったかのように、
蓮哉はその場を去って行く。
いつもなら家の前まで
送るって言ってくれるのに。
じゃあなって。
早く寝ろよって。
絶対言ってくれるのに。
「待って…っ、蓮哉ぁ…」
泣き叫ぶあたしの声にすら、
少しも反応することはない。
へなへなと座り込んで、
小さくなる蓮哉に手を伸ばす。
掴めるはずがないのに、
無理矢理体を引きずる。
何を言えば戻って来てくれるのだろう。
どうしたら分かってくれるのだろう。
理解しないといけない。
けれどあたしの頭は、そんなに
利口ではない。
「勘違い…」
ふと頭に過ぎる。
夕方、校舎に向かって行く
朝陽を見て、
あたしが思ったこと。
朝陽があたしを好きなのは、
きっと勘違いだと思った。
近くにいた。
だからあたしを好きだと勘違いしている。
そう思った。
「ごめ…朝陽、」
今になって分かる。
あたしが蓮哉を想っていることが、
勘違いではないように。
朝陽の想いも勘違いなんかじゃ
ないんじゃないかって。
あたし、何も分かってなかったんだな。
悠太郎に愛されてばかりで、
人を好きになる苦しさを知らなかった。
愛されないことの辛さは、
何よりも痛い。
今度会ったら朝陽に謝ろう。
ありがとうって。
好きになってくれてありがとうって。
そして何度も伝えよう。
蓮哉に好きだって。
勘違いなんかじゃないよって。
「痛っ…」
無理矢理引きずった膝から、
少し血がにじんでいた。
自業自得だ。
人の想いも軽んじて見て、
自分の気持ちもしっかり持てず、
周りに迷惑をかけるあたしなんて、
もっと傷だらけになればいい。
ばかな自分が、
嫌ほど憎らしい。
こうなることを望んだわけじゃない。
だけど。
こうなったのは、
他の誰でもなくあたしのせいなんだ。