口の悪い、彼は。
 

「心配すんな。別に高橋が裸で部屋を歩き回ろうと気にしねぇし、俺しかいねぇんだから何の問題もないだろ」

「一番問題あるじゃないですかっ!」


好きな人の前でノーパンなんて、嫌!!

裸族になる気もない!!

っていうか、部長にパンツを洗わせたなんて最悪すぎる!


「ほら、ぐだぐだ言ってないでさっさと来い。30秒以内に来なかったら部屋から追い出すからな」

「ちょ……っ!!」


私は手を伸ばしたけど空を切るだけで何の意味もなさず、部長はリビングの方へ消えていってしまった。


「っていうか!30秒!?」


あの有言実行の部長だ。

遅れたら本当に追い出されそうだ。

さすがにそれはよろしくない。

私は慌てて、用意されたそれに手を伸ばした。



……あんな風に言っておきながら実はちゃんとノーパン対策をしてくれていた部長に、『部屋に女の人がお泊まりすることに慣れてるんだろうな』と思ってしまったのは仕方のないことだと思う。

というのも、用意された服の一番下に、男物のボクサーパンツがしっかり置かれていたからだ。

男物ということもあって私には大きめだとは言え、ないよりは何倍もましだ。

封を切っていない新品を出してくれていた心遣いにも完全にやられたし、何か悔しい。

……まさか、携帯用の化粧セットとかあったりしないよね?

さすがにそれは『女の人がお泊まりしたことがある』ことの事実になるし、あまり気持ちのいいものではないけど……。

そしてばたばたと柔軟剤のいい香りがする服を着て寝室から出てみれば、出来立ての朝食が用意されていて、それにもやられてしまったことは言うまでもない。

 
< 97 / 253 >

この作品をシェア

pagetop