生えてきた男
 叔父さんが戻るまでの間、俺は何度もその声を聞いた。

「マサヒコ」

「マサヒコ」と。



「お待たせしました」

 叔父さんは、手にした懐中電灯で柵の中を照らした。

 明かりは、3メートル先ほどまでしか届かない。

「では、行きましょう」

 俺達は、竹で出来た柵をまたぐと中に足を踏み入れた。

 地面でパキッと枝が折れる音がした。

 野鳥はいるのかいないのか、羽音すら聞こえない。

「マサヒコ・・・」

 思ったよりも近い場所で声がした。

「わっ」

 思わず声を出す。

 そんな俺の声に動じず、叔父さんは懐中電灯であたりを照らした。

「どこだろう・・・」

 声の主はなかなか見つからなかった。

 叔父さんは、俺より5メートルほど先を歩いていた。

「わっ! わっ、あっな、なんだ!!」

 普段の穏やかさからは想像出来ない慌てぶりで、叔父さんは180度方向転換して俺を突き飛ばすと、柵を乗り越え、どこかに行ってしまった。

「叔父さん!」

 しりもちをついた俺の傍に、懐中電灯が転がっていた。

 何なんだ?

 
< 7 / 10 >

この作品をシェア

pagetop