生えてきた男
 静まり返った空間に取り残された。

 まるで時間までも止ったんじゃないかと思えるほどの静けさ。

 いつもなら柵の向こうを走っている人影も途絶えた。

 どうすればいい?

 起き上がろうとしても、腰が抜けてしまって立てない。



「マサヒコ」

「!!」

 声は、俺のすぐそばから聞こえた。

 俺は、懐中電灯を手に取ると、声のする方に向けた。

 そんな・・・

 まさかそんな・・・

 そこにいたのは親父だった。

 俺の本当の親父。

 仏壇で、にっこり微笑んでいる親父だった。
 
 お袋は、いつも仏壇に手を合わせて拝んでいた。

 親父の供養の為だ。

 だったらなぜ親父がここにいる?

 どうして、死んだはずの親父がここにいるんだ?

「やっと出て来たよ」

 しみじみとそう呟く親父。

 長い年月、この世界にはいなかったような言い方だ。

 でも、何か変だ。
 
 どこが変なんだ?

 




< 8 / 10 >

この作品をシェア

pagetop