それが愛ならかまわない

 顔だけを動かして、椎名の眼がこちらを見る。覚悟して出て来たはずなのに、剥き出しの手足を隠したい衝動に駆られた。身体の温度が上がっている気がするのはきっとシャワーやエアコンのせいだけじゃない。
 疲れの色が見える表情がその眼の色気を倍増させていた。絡め取られて動けない。


「もういい?」


「え?ああ……うん、まあ。っていうか椎名はシャワー……」


「じゃあ」


 ぐっと腕を掴まれ、開いたワイシャツの襟元の向こうに見える鎖骨が至近距離に迫る。急過ぎて思わず心臓が跳ね、そのまま鼓動のスピードがどんどん上がっていく。シャワーで暖められた身体にさっき飲んだ発泡酒がもう回ったのか、視界が潤んで頬がかあっと熱くなった。
 何かを言う余裕も考える余裕もなく、あっという間にベッドの上に押し倒されていた。垂れ下がったネクタイが頬をくすぐる。見下ろしてくる椎名と真正面から目が合って、思わず瞼を閉じたらバサッと頭の上から何か降ってきた。


「……?」


 ゆっくり目を開けてみると、ベッドの隅に畳んで乗せてあったルームウェアだった。どうやら椎名が私の顔めがけて放り投げたらしい。


「何これ。どういう……」

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