それが愛ならかまわない

 徹夜明けだし、眠って休んだ方がいい事くらい私にだって分かっている。でも今のこんな気分じゃ仕事の夢を見てうなされてしまいそうでとても安眠なんて出来ないと思ったからこそ、椎名に縋ったのに。


「……眠れるよ」


 椎名の声が少し低くなった。


「うなされたりもしない。悪夢なんか見ないし、ちゃんと熟睡出来る」


 それは予言でも催眠術でもなく、もちろん何の根拠もない言葉だった。
 けれどいつもの淡々とした温度を感じさせないトーンじゃない。こんなに柔らかく喋る彼の声を初めて聞いた。じわじわと暗示のようにその台詞が身体に沁みてゆく。


 肘を立てて上半身を起こそうとしたけれど、一度横になって力を抜いてしまったので、もう身体が言うことを聞かなかった。寝不足かつ空腹な状態に流し込んだアルコールがじわじわと体内を侵食していたらしく、急激に瞼が重くなって眼の焦点が合わない。
 目の前にあるはずの椎名の顔すら見えなくなった瞬間、微かに声が聞こえた気がした。


「……色々、よく頑張ってると思うよ」


「────し、い…………」

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