それが愛ならかまわない
ふつっと意識が途切れるように眠りに落ちて、彼の言葉通り夢も見ず熟睡した。目が覚めた瞬間はまるで瞬きの間に時間が過ぎたような感覚だった。
よほど深く眠っていたんだと思う。アルコールが残っている感じも熱っぽい感じもなく気分がすっきりしている。
壁にかかっている時計を見ると夕方の六時前だった。日が落ちて部屋の中がすでに暗い。家に帰って来たのが十一時前だったので六時間と少しくらいは寝ていた計算になる。
椎名はどうしただろう、と身体を起こすとベッドのすぐ下、スーツのジャケットを掛け布団代わりにしてラグの上に横になっている彼の姿があった。テーブルの眼鏡と腕時計の横には外されたネクタイとスマートフォンも並べられている。飲まなかったはずの発泡酒の缶はいつの間にか消えていて、どうやら椎名が冷蔵庫に戻したらしい。
エアコンがついていて冬用の毛足の長いラグを敷いているとは言え、初冬のこの時期にこの隙間風の酷い部屋でかけ布団もなく床の上で寝かせてしまった事に罪悪感を覚える。しかも冷静になって考えてみれば当然家の鍵は私が持っている。椎名は鍵をかける事が出来ないんだから、自宅に帰りたくても帰れなかったのかもしれない。
自分が使っていた掛け布団を椎名にかけると、ぴくりと身動きをして椎名がゆっくりを目を開けた。
「あ、ごめん。起こした?」
「……今何時」
微かに掠れた椎名の声が尋ねてくる。
そう言えば前回は私がシャワーを浴びている間に椎名が完全に起きてしまっていたので目覚めたばかりの寝起きの姿は見ていなかったな、なんて事を思い出した。