それが愛ならかまわない
「もうすぐ六時」
「……バイト、八時からって言ってたな」
窮屈な場所で窮屈な姿勢で寝たせいか、関節を伸ばす仕草をしながら椎名が身体を起こす。ワイシャツにしわが寄っていて、罪悪感が更に増した。
「ごめん、寒かったよね。うち隙間風結構あるし」
「エアコンついてたから問題ない」
「風邪とかひいてなきゃいいけど……とりあえずコーヒー淹れてくる」
肌寒い台所でポットで沸かしたお湯をドリッパーに注いでいると、背後に気配がした。
無言のまま腕が伸びてきて額に手が当てられる。触れる瞬間、思わず身体を硬直させてしまったけれど、寝る前は冷たく感じたその掌が今は逆に温かい。それはお互い寝起きだというせいじゃないだろう。
「熱は、下がったみたいだな」
元々高熱という程でもなかったし、多分徹夜の疲れが主な原因だったんだと思う。結局無茶苦茶な私の主張よりも椎名の判断が正しかったという事だ。
顔に触れていた手は離れたけれど、今度は背中に感じる体温に心拍数が上がっていく。