それが愛ならかまわない

「……ありがと」


 振り向かない姿勢のまま、口をついて出たのは感謝の言葉だった。


「お陰でよく眠れた。思ってた以上にすっきりして自分でも驚いてる」


「篠塚は色々自分で自分の首を締め過ぎ」


 本当は、眠れないなんて理由じゃない。
 荒れた気持ちを宥めたかったのは本当だけれど、その実ただ椎名に触れたかった。触れられるという事実で、その熱を共有することで、安心したかった。
 回りくどい言い方で誤魔化したのは素直になれない私の狡さだ。


「……据え膳差し出されたらきっちり頂く主義じゃなかったの?」


「時と場合による。人を四六時中飢えてるみたいに言うなよ。そもそも寝るために人を利用しようとしてたんだから無駄に身体張らずに済んで良かっただろ」


 本当は眠りたいという以上に邪な願いがあったのが事実なのだけれど、椎名の言う通り眠れて体調も気分もすっきりしたのだから良かったと言うべきだろう。
 強引に迫って抱かれていたら今以上の自己嫌悪に陥っていたに違いない。

< 193 / 290 >

この作品をシェア

pagetop