それが愛ならかまわない
定期的に開かれる会社の同期会。
直接話した事はないしどこの部署かも覚えていないけれど、いつも端の方で一人ひっそりと飲んでいる男がいた。間違いない、さっきのあの顔だ。
失敗した。会社の人に遭う事のないように、こんな離れた場所にある店をバイト先に選んだのに。
さっきの私の大声は間違いなく例の彼も聞いていたに違いない。もし社内で話して広められたりしたら必死で作り上げてきたイメージが台無しだ。何より会社に黙ってバイトしている事も知られてしまったはずだった。
唇を噛んでいると、小野さんが声をかけてきた。
「どうしたの、何かあった?」
「……いえ、何でもないです」
バイト先での私は会社員ではなく、昼間は別のアルバイトをしているフリーターだということになっている。小野さんに会社の同僚に遭遇してしまったようだなんて言えるわけがない。
ショウケースの後ろに並んで立ちながら小野さんはまだ私を気にしているようだったけれど、店内に客がいるのでそれ以上の追及はしなかった。
クローズが午後十二時と場所柄遅くまで開いているこの店にはこんな時間でも客足が途絶えない。行きつけの店への手土産だったり家への土産だったり。イベント用のケーキの注文も多い。