それが愛ならかまわない

 笑顔を貼り付かせ機械的に仕事をこなしながらも、私の頭の中は先程の件でいっぱいだった。
 社員の副業は禁止されている。仕事自体は真面目にやっているし使える人間だと自負出来るレベルの成果はあげているのでまさかとは思うけれど、最悪退職させられるかもしれない。当然ながら仕事を辞めたいとは思っていないのに。もちろんそこまでの処分ではなくても、移動や減俸の可能性なら充分にある。


 見られたのはたった一人。それも同期だ。彼が黙ってさえいてくれれば会社で問題にされる事はない。
 解決手段は考えるまでもなく一つ。相手に黙っていて貰うこと。


 ……どうやって?


 『口止め』のセオリーが頭の中を駆け巡る。
 お金があるならバイトなんてしていない。私には賭けられるものなんて最初から────自分自身、しかない。


 激しく動いたわけでもないのに、心臓の鼓動が再び早くなった。周りに気付かれないように大きく息を吐く。
 覚悟を、決めなくちゃいけない。


 あの人がどういう人か分からない。黙っていて欲しいと頼んでどう答えるかも。
 まずは彼を探す事。どこの部署の誰かを突き止める事。
 全てはそれからだ。



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