それが愛ならかまわない
* * *
「あれ?篠塚ちゃん。こんな所に来てるなんて珍しいね」
そう声をかけられた時、私は廊下に据えられた観葉植物の影で金融ビジネス部の入り口を見張っている所だった。 少しばかりフライング気味に自分のフロアを飛び出し、ダッシュでここまでやって来たのだ。
昼休みの時間になって、廊下は人通りが多くなっている。あまり人目に付きたくはなかったのだけれど、見つかってしまったものは仕方ない。
「長嶺さん、こんにちは」
長嶺さんは新人研修の時に新入社員達に講演をしてくれた先輩社員のうちの一人だ。
強面の割に意外と面倒見の良い人で、部署は違えど今でもたまに飲みに行く仲になっている。彼は上司に気に入られているせいか社内のあらゆる情報に詳しくて、酒の席でそれを聞けるのは社内で上手く立ち回りたい私にとって色々と助かっていた。
「加賀と飯食いに行くけど篠塚ちゃんもどう?」
「すみません、今日はちょっと……」
いつもだったら情報収集がてら誘いに乗る所だけれど、今日は目的があってここまで来ているので他の人と食事に行くわけにはいかない。
「じゃあ夜は?」