それが愛ならかまわない

 やっぱりしっかり見られていたらしい。そして彼はあれが私だと認識している。


「その件は後で!とりあえず用意がないならお昼行きませんか?奢ります」


 うちの会社には社員食堂があるけれど、外へ食べに行く人やお弁当を買って社内で食べる人も多い。さっきの長嶺さん達もそうだ。会社のある筋から一本先の大通りを渡ると歓楽街があって飲食店には困らないし、ビジネス街なのでそこかしこの街頭で作り立てのお弁当を売りに来ている業者がいる。
 もちろん私は社内の人間に聞かれては困る話をしようとしているので、社食も社員が行きそうな場所も避けたかった。
 昼休みは一時間しかない。時間は限られているのでいつまでもここで押し問答しているわけにはいかない。


 彼は不退転の決意で臨む私の顔を見て、溜息を付くように言った。


「まあいいけど」


「良かった!」


 まずは第一段階クリア。
 私はまだ彼の名前すら知らない。自分ではそれなりに社交的なタイプだと思っているけれど、さすがに名前も知らず話した事もない人間をいきなり食事に誘うのには結構な勇気が必要だった。

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