それが愛ならかまわない
「で、どこ行くの篠塚サン」
さらりと自分の名前を口にされて驚く。
「え?なんで私の名前……」
「法人ソリューションの篠塚莉子だろ。よく石渡達が話題にしてる」
石渡君は集まる時に度々幹事を務めてくれる同期の一人だ。
一対一で誘われた事こそないけれど、新入社員の頃から割とあからさまに私に好意を示されていると感じていたのはやっぱり勘違いじゃないらしい。女子社員からの人気も高い爽やかなイケメンだ。ただ困ったことに私のタイプじゃない。
「……あの」
「椎名晃」
名前を尋ねる前に簡潔に答えが返ってくる。私が名前を知らなかった事もお見通しの様だった。結構鋭い。
今朝会社のロビーで待ち伏せてから後を尾行して所属部署はチェックしたけれど、名前までは分からなかった。同期の誰か、それこそ石渡君にでも尋ねれば簡単に分かっただろうけれど、変に勘繰られたら面倒臭いし。