それが愛ならかまわない
シイナアキラ。
金融の情報にはあまり明るくないけれど、私の所に集まる社内の噂話でその名前が出て来た事はない。
見た目の通りあまり目立つタイプじゃないんだろう。
「ごめんなさい、同期全員覚え切れてなくて」
上目遣いに手を合わせてみたけれど、相手は肩をすくめただけだった。
いちいち素っ気無い態度は引っかかるけれど、気分を害した様子はなかったので良しとする。
「とりあえず椎名君、外行こう」
非常階段を降りて会社の外に出て行くと、彼は何も言わず後に着いてきた。
私が例えば長嶺さん辺りと行くような店は社内の人間で溢れている。ひっそりとして話が周囲の客に漏れないような店が良かったけれど、生憎とそんな店が思い浮かばなかった。これから切り出そうとしている件の緊張も相まってどうにも頭の回転が鈍い。
ダメだ。話す前からペースを乱してどうする、私。
「どこ行けばいいの」
「えーっと……」