それが愛ならかまわない

「おい」


 椎名は座ったまま驚いた顔でこちらを見ている。
 今日はバイトが入っていないのは幸いだった。昼休みを潰させといて話が終わらなかったのは申し訳ないけれど、どう足掻いたって時間には限りがあるんだから仕方ない。
 いいよね、男は化粧直しなんてする必要ないし。そもそも法人ソリューションのフロアは金融ビジネスよりもビルのエントランスホールから遠いのだ。


「じゃあ七時に裏のビルの地下にあるコンビニで。お先に!」


 それだけ言い残すと、椎名の反応も見ずに鞄を掴んで私はお店を飛び出した。
 精算を忘れてきたのに気づいたのは、困った事にそれから一時間以上経った後だった。













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