それが愛ならかまわない

* * *




 ソファセットの横に据えられた観葉植物の向こうから、ホテルのスタッフと椎名が歩いて来る。その靴音がまるで何かのカウントダウンの様だった。シックな雰囲気のロビーでも、私の心の内はざわざわと落ち着かない。
 せめて酔いがまだ残っていれば良かったのに、ここまで歩く内にほとんど冷めてしまった。


「お部屋までご案内致します」


 きっちりと一礼するホテルマン。気後れした様子もなく、椎名はその後に堂々と着いて行く。
 本当はこんな事に使うホテルじゃない。大切な人とゆっくり過ごす為の場所だ。だってやるだけならラブホテルで充分だし。
 けれど酔ったついでに勢いで放った我儘のせいで私は椎名とここにいる。
 まあ会社があるのはオフィス街で周りにラブホなんかないし、実質一番近いホテルがここだったりもするのだけれど。


 終業後、コンビニに現れた椎名は不機嫌さを隠そうともしなかった。
 悪いとは思う。急いでいて失念していたとは言え、食い逃げみたいになっちゃってるし。当然ながら代金は椎名が建て替えてくれていた。
 バイトの件を口止めしようと思って呼び出したのに、余計に迷惑かけるなんてとんだ失態だ。

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