それが愛ならかまわない
「そうだ、ちょうど良かった。来月に忘年会兼ねてまた同期会やろうって話してたんだ。篠塚さんの都合悪い日教えてよ。その日は除外するから」
「えっ……でも毎回全員が参加出来るわけじゃないのに、私だけ予定調整してもらったら悪いよ」
「いいのいいの。篠塚さん来ないとつまらないし」
会社の食堂なんて人目の有りまくる場所でこんな事を言うんだから油断ならない。
長嶺さんや立岡さんや井出島部長なんかは私を可愛がってくれるけれど、そこに色気が混ざらない。彼らと勤務時間外の付き合いを出来るのはそのせいだ。そしてこれが石渡君と社外で会う約束をしない理由でもある。
彼に入社以来好意を持たれているのは分かっていたけれど、最近は特に露骨な態度になって来ている。それでも核心を突いた事を言われるわけじゃないので適当に受け流すしかない。
石渡君が外堀を埋めて行っているからか段々と同期全体が応援ムードになりつつあるのも面倒だった。今も安田君達はこちらの会話に入って来ようとしない。
斜め前に座る椎名を視線の端でチラリと見たけれど、カレーを食べ終えた椎名は水を飲みつつ窓の方を見ていて会話に参加する気を見せなかった。溝口さんの当たり障りのない話に一言二言返すだけだ。その分倍以上安田君が喋っている。
この様子じゃこちらの話を聞いているかどうかすら怪しい。まあ私が困っている事を察しているとしても、元より椎名の助け舟なんて期待出来はしないけれど。