☆Friend&ship☆ -序章-
生理的な涙で潤んだ赤い目を長すぎるまつげごと擦りながら空いた手で脳天をさするヘルメス。
「痛かった」
キングが来てから精神年齢が一気に一桁まで落ち込んだような変わりぶりだ。
「何のようで来たんだゼウス」
「俺には冷たいのな」
諦めてゼウスはヘルメスを引っ張り出して小船に乗せ、さっさと船を離れてしまった。
その間わずか一分足らず。
「誘拐だー。」
「おいこら感情込めていいやがれ」
無表情と無感動と興味無しとがあいまって、アクセントまで無くなってしまった。
「小遣いなら渡した」
「もらったけど?」
「何故俺を連れていく」
「別に財布ってわけじゃねえ。一緒にいたいとおもってさ」
「何でキングじゃないんだ」
「だからよ、お前と一緒がいいの」
「…二昔前の口説き文句だな」
お前ほどの美形ならば問題ないがとヘルメスがしげしげと…するはずの場面で無表情のままゼウスを見た。
「感情」
「無いものはない。命令しろ。命令を」
「ヤだよ、一から十まで100%Not個性じゃ」
「ところでどこに行く気だ」
「へ?そりゃあお前にサーフィンを…」
「もう娯楽は十分だといったろう」
いい加減に、といいかけたところで急に止まった。
「そこはきゃっ、とか言って倒れる場面だろ」
「それを期待しているのなら今からでも遅くない、イーリスを乗せろ」
きゃあどころか揺らぎもしなかったヘルメスにゼウスはため息を吐いた。
「どこまでいってもイケメンだな、お前」