君の名を呼んで 2
泣き出しそうになる自分を無理矢理押し込めた。

誰かの言葉に惑わされたりしない。
傷ついたりしない。

皇に会いたい。
彼の顔を見たい。

そう思った時ーー


「まぁた浮気してやがるな、この鈍感奥様は」


……いつもいつも。
いいタイミングで私を惹き付けるのね。


「ーーしてませんてば」

私は答えて、声がした方を向く。


目の前に現れた、最愛の旦那様に笑顔を返して。
現金なもので、その瞬間にさっきまでの身体の痛みなんてどこかにいってしまった。


彼の車に乗り込み、要が見えなくなると、なぜかひどく安堵しながらいつも通りの軽口を叩く。


「そもそも皇にとっての浮気の定義って何ですか?」

「ん?まあ夫婦なら法律的には他人とヤッたら不貞行為だろ。けど俺は達人お墨付きの嫉妬深さだからな。
お前の視界に、俺以外の男を1分以上入れたら浮気。ハイ決定」


どこの達人お墨付きよ!
そしてなんて厳しい時間制限なの。

私は顔を引きつらせて報告してみる。


「要を15分ほど、駅で鼻歌歌ってたおじさんを2分ほど、コンビニのお兄さんを3分ほど視界に入れちゃいましたけど」

「この浮気性め。お仕置きだな」


皇は面白そうに言って、私を横目で見た。
けどすぐにその顔が曇る。
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