君の名を呼んで 2
ちょうど信号待ちで車が止まって、皇は助手席の私へ顔を向ける。


「悪かったな、誕生日。一緒に居てやれなくて」


ああ、気にしていてくれたんだ。
それは、私のわずかに波立った心を落ち着かせてくれる。

皇の指先が私の目元に触れた。
きっと寝不足で腫れた目をしているからだ。
いつもより優しいキスは、彼なりのお詫びのつもりなのか。
私は触れた唇に、答える。

「大丈夫、ですよ」


そうして私はまた一つ、嘘をついて。


「一人で美味しいご飯と、絶景露天風呂を満喫しちゃいましたからねー」

「ああ残念だな。残念過ぎる。せっかく雪姫が少ない色気を振り絞って、エッロいお誘いをしてくれたってのになぁ」

「きゃああ、何言ってるんですかっ!ていうか、色気少なくてすみませんねぇ!そして残念ポイントそこですか!」

「あ、大丈夫大丈夫。今夜再放送ということで」

「しませんっ!!」



ーー初めて、あなたに見破れない演技をした。
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