重い想われ 降り振られ
唇を放し、顔を近づけたまま言う。

「何?じゃあ、俺の女にしてやるとでも言えば満足?」

真理子はたまらず橘を押し返し、手を上げた。

パーン。

乾いた音が路上に響き、橘の頬が熱くなる。

真理子の瞳は涙でいっぱいになり、視界が霞んで見えた。

橘を叩いた手が、ヒリヒリと痛む。

真理子は何も言わず走り去った。

涙でいっぱいの瞳が脳裏に焼き付き、橘は一瞬追いかけようとして止めた。

『面倒くさっ。なんで俺、追いかけようとしてんだ?』

女に殴られる経験なんて、珍しくない。

なのに追いかけたい衝動と、放っておけばいいと言う気持ちが葛藤する。

『追いかけて捕まえて、どこかにでも閉じ込めてしまえば気が晴れるのか?』

そんな事を想像していた橘は、突然笑いがこみあげた。

『マジでそんな事したら俺、犯罪者じゃん。』

橘は、朝の人気の無いホテル街を後にした。
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