重い想われ 降り振られ
『えっ?もしかして、見ていた?』

真理子の部屋の前からは、アパートの入口付近が丸見えだ。

ここからなら、小林の車も見えていたはずだ。

真理子がアパートに入ってくるところも、階段を上がってきた事も、
解っていたはずなのだが、橘は無言のままだ。

気まずい。

真理子は声を掛けるべきなのか、無視するべきなのか迷ってしまう。

ここで橘を無視すれば、真理子にはもう付きまとわなくなるのかもしれない。

そう判断した真理子は静かに橘の背後を通り、玄関の鍵を開けて扉を開けた。

声を掛けずに通り過ぎる事に、真理子の心は少し痛んだ。

静かに玄関の扉を閉める・・・

閉まりかけた扉がガタンと止まり、ものすごい力で再び開け放たれた。

扉に手を掛け、橘が中に入ってきた。

橘の勢いに押され後ずさりした真理子は、玄関と床の段差につまずき倒れる。

バタンと大きな音を立て、真理子が倒れると同時に扉も閉まった。

暗い室内で橘に覆いかぶされ、至近距離でギラっとした瞳を真理子は見た。
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