アスファルトの女王
本章
三ヶ月前のバレーの試合で左の人差し指、中指、薬指を骨折した。それもただの骨折ではなく、粉砕骨折だった。普通はバレーくらいでそんなことにはならない。しかしバンドでギターを弾いていた私はその練習の疲労が祟って大怪我になってしまったのだ。
 普段通りのブロックだった。サーブボールを押し込もうとした瞬間、針を突き立てられたような痛みが走った。骨折するときは、骨の折れる音が聞こえると言うけれど、そんなことはなかったと思う。ただ気づくと、私の身体はコートの中に横たわり、必死で左手の痛みを堪えようと身体を丸くしていた。
 私はすぐに救急車で運ばれ、手術を受けた。一ヶ月入院して、退院してからもリハビリを続けた。利き手ではないし、今は日常生活に支障はない。それでも当然ながら、バレーをすることもギターを弾くことも、もう二度とできなくなってしまった。
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