夫婦ですが何か?
チュッと響く音と時々肌をくすぐる舌先の動きに不必要な熱がジワリジワリと高まるのを感じる。
そろそろ引き離すべきかタイミングを計っていると先手を打ったのは彼の方。
スッと体を滑る指先が私の部屋着化している彼のパーカーに入りこんで素肌をくすぐる。
止める?
どうする?
『やめろ』と言うのは簡単で、言えば彼なら止めてくれるだろう。
その一言を言うのは酷く簡単すぎて逆に言うのを躊躇うほど。
そして、悔しいかな・・・・触り方が気持ち良すぎてもう少し、もう少しと引き延ばしてる自分もいる。
私も欲求不満って事か。
まぁ、考えてみたら最後っていつ?
そんな回想をし始めてしまえば思いがけず・・・、いや、必然的に思いだした顔や声に眉根を寄せ舌打ちしてしまった。
当然今現在目の前にいる彼がそれに反応しパッと離れて覗きこむ。
「・・っ・・・・そ、そんな舌打ちするほど嫌?」
「・・・いえ、・・・・【お上手】かと」
「逆に恐ぇよ!千麻ちゃんの賛辞は逆の意味になりそうで!!」
「本当に舌打ちに関してはあなたにではないですよ」
「・・・・じゃあ、このタイミングで一体何にそんな不快感を?」
理解不能だと眉尻下げた困った笑みで私を見降ろす姿をじっと見上げる。
そして少しばかり思考して結論。
「面倒なのでこの行為にって事でいいです」
「ええっ!?面倒だからって理由で結局俺が悪者!?」
「・・・・・眠いので寝ます」
「ちょっ・・・!」
焦る彼を無視してくるんと横を向いて目蓋を閉じると、さすがにもう手を出せないと言葉を飲み込みしずしずと隣に沈む彼。
さすがに少し気の毒かと背中合わせに倒れ込んだ彼を振り返った。
至近距離に捉える細いけれど男性的な骨格の背中や肩。
時々抱きしめられれば嫌でも男を感じる。
ああ、いつの間にか上司という生き物から男という視点に移り始めている。
「・・っ・・」
「あっ・・・」
気がつけば思わず指先でなぞってしまっていた肩甲骨。
触れてなぞった瞬間に自分で驚きの声を上げ、彼はビクリと反応し私を首だけ捻って振り返る。
「・・・千麻ちゃんは拒絶してんの?誘ってるの?」
「・・・・なんか・・・・触ってほしいってこの肩甲骨が・・・」
「どんな言い訳だよ・・・。どうせなら後ろから抱きついてくるとーーー」
言い終わる前に実行。
呆れた声で微々たる願望を告げた彼の背中に張り付いて、腹部の位置で自分の指先を絡めてみる。