スケッチブックに描くもの
 やっと全員が動き出す。ふー。緊張した。
 私の前のネットもホワイトボードもなおされる。
 私が立ち上がり帰る用意をしているとまた、部長だ。

「まだ描けないのか?」
「そんなに簡単じゃないんです」
「今日はたくさん描いてたように見えたが」

 試合の合間に私を見てたの? どれだけ余裕なのよ! 確かに描いてたけど……。

「絵になる絵が描けてないんです。それじゃあ。来週もお願いします」

 なにか言われる前に去らないとこのままだとコートを追い出されそう。私は慌ててその場を去る。


 帰り道スケッチブックを広げる。
 うーん。確かに今までよりいい絵だけど、本当に何かまだ足りない。そう足りないの。あの場所にいる理由を見つけて安堵する。
 まだ、彼とほとんど話していない。口実もなければ、チャンスもない。部長が目を光らせてるから話す隙がない。
 このまま絵を完成させて終わっちゃうよー。
 かといってクラスが違う彼は話かけづらいし。
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