ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


ドアがパタンと閉められた。



手も早いけど、逃げ足も早い人だと呆れてしまった。



怒りをぶつける相手がいなくなり、ため息をついた。



隣に立つ久遠さんが、私に聞く。




「おい、結婚って何のことだ?」



「あ……
何でもありません。気にしないで下さい」



「そうか」




堂浦さんには、本当に困ったものだ。

言い残した言葉まで、余計なこととは。



深く追及されずに済んで、良かった。

私のポリシーを、久遠さんには知られたくない。



知られたら、距離を置かれてしまう気がして……

何となくだけど。




「そうか」と会話を終わらせてくれた久遠さん。


でも、じっと私を見たまま、
視線を外そうとしない。



切れ長の二重の瞳が、探るように私に向けられていた。



何か言いたそうな彼に首を傾げると、こんなことを聞かれた。




「それで?

堂浦に何されてたんだ?」




< 110 / 453 >

この作品をシェア

pagetop