ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
ドアがパタンと閉められた。
手も早いけど、逃げ足も早い人だと呆れてしまった。
怒りをぶつける相手がいなくなり、ため息をついた。
隣に立つ久遠さんが、私に聞く。
「おい、結婚って何のことだ?」
「あ……
何でもありません。気にしないで下さい」
「そうか」
堂浦さんには、本当に困ったものだ。
言い残した言葉まで、余計なこととは。
深く追及されずに済んで、良かった。
私のポリシーを、久遠さんには知られたくない。
知られたら、距離を置かれてしまう気がして……
何となくだけど。
「そうか」と会話を終わらせてくれた久遠さん。
でも、じっと私を見たまま、
視線を外そうとしない。
切れ長の二重の瞳が、探るように私に向けられていた。
何か言いたそうな彼に首を傾げると、こんなことを聞かれた。
「それで?
堂浦に何されてたんだ?」