ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
家の中に、いないのだとしたら……
久遠さんがベランダに出た。
気持ち良く風にそよぐ洗濯物を、
邪魔だと言いたげに掻き分けて、
ベランダの隅にしゃがみ込む。
彼が見ているのは、雨水を流すための排水管。
ちょうどハムスターがスッポリ入ってしまうほどの管が、
各階の雨水を集めて、下まで続いていた。
もしこの管にミカコさんが入ってしまったなら、
外へ逃げ出すことも可能だ。
嫌な予感に、青ざめた。
オロオロしながら、彼を見ている私。
久遠さんは排水管を調べ、内側に付いていた何かを指でつまみ、
光にかざした。
それは、動物の茶色の毛。
「ミカコの毛だ……」
血の気が引く思いだった。
私のせいで、ミカコさんを大脱走させてしまった。
「わ、私、外を探してきます!」
ベランダから出て、リビングを走る。
慌て過ぎて、何かにつまづき転んでしまった。
そんな間抜けな私の上を飛び越えて、久遠さんが先に家を走り出た。