ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


5時間経ち、6時間経ち、

時刻は夕暮れに近付いていた。



午前中はあんなにいい天気だったのに、

いつの間にか空は、灰色雲に覆われていた。



まるで私の心を写したような、
不安に彩られる空。



頬にポツリと雨粒を感じた。



すぐにサアサア音を立てて雨が降り出し、

人も建物も、全てを濡らしていった。



ずぶ濡れになりながらも探す範囲をかなり広げて、

私は今、隣のマンションと民家の間の、狭い路地裏にいた。



雑草を掻き分け、転がるゴミの中を一つ一つ確認していると、

久遠さんに呼ばれた。




「夏美、帰るぞ」



「で、でも……」



「雨が強くなってきた。

こうなったら、ミカコも出てこない。

ミカコは……きっと、二度と見つからない……」




久遠さんの着ているボタンシャツが、濡れて体に張り付いていた。



均整のとれた筋肉質のボディラインが、はっきり分かってしまう。



いつもなら、ドキドキしてしまうその姿も、

今ばかりは苦しく思うだけだった。



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