ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
狭すぎて、彼は追ってこれない。
路地裏を駆け抜けた私は、彼から遠く離れた。
小さな家々がひしめく住宅地は、
迷路みたい。
もうどこを探していいかも分からないけど、
足元を見ながら歩き回っていた。
路地裏から抜けて、舗装道路の外灯の下に出ると、
通行人が「ヒッ」と短い悲鳴を上げた。
雨の中、傘も差さずにいる私。
びしょ濡れの髪が頬に張り付き、
おまけに土汚れでひどい見た目だ。
お化けに見えても仕方ない。
雨は止む気配がなかった。
辺りはすっかり暗くなり、急に心細くなる。
ここから、久遠さんのマンションの姿は確認できた。
窓に明かりの灯るマンションを見て、帰りたくなるけど、
その気持ちを叱咤する。
私が悪いのに、このまま帰るわけにはいかない……
そう思っていた。