ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
「ミカコさーん、ここにいますかー?」
返答がくるはずないのに、呼びかけながら空き家を半周した。
裏庭に出ると雑草や庭木が生い茂り、ちょっとした林のようになっていた。
そこに目を引く物があった。
古タイヤや板切れ、年代物の家電製品が積み上げられたゴミの山だ。
引越しで出たゴミを、処分せずに庭に集めて放置したみたい。
高さは私の背丈を優に超えていた。
目を引く物は、もう一つ。
ゴミの山の横に、丸いコンクリート製の井戸があった。
その上にはベニヤ板が乗せられ、
フタがされている。
都会にも井戸が存在することに少し驚いてから、粗大ごみの山に視線を戻した。
ゴミの山はあちこち隙間だらけで、ミカコさんが隠れるにはちょうどいいと思った。
雨宿りもできるし、猫やカラスから隠れることもできる。
薄暗い中で目をこらし、ゴミの隙間を覗き込む。