ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
二人のキスシーンを真横で見ながら、
「いいなぁ…」と、やっぱり羨ましく思ってしまう。
半開きの口でぼんやり眺めていると、
チュッチュしていた久遠さんが、
視線を私に流した。
フッと表情を和らげる彼。
ミカコさんから離した顔を、
なぜか私に寄せてきた。
綺麗な指先で私の顎を持ち上げ、
端正な顔を斜めに傾け、近づいてくる。
そして……
形の良い唇が、私の唇に触れた。
それは一瞬のキス。
チュッとリップ音を立てて、
すぐに離れていった。
突然のキスに、私は目が真ん丸になる。
たっぷり10秒、驚き固まってから、
「どうして……?」
絞り出すように、そう聞いた。
キスされる理由が見つからない。
私を好きになった……?
それなら嬉しいけど、それは有り得ない気がした。