ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
白衣の変な久遠さんの説明通り、
夏美はキレのあるビールで、喉越しがスッキリしていた。
今まで飲んだビールの中で、ピカイチの喉越しだ。
でも……なんだろう?
スッキリし過ぎて、後味が淋しい気がする。
グラスに半分残ったビールを見つめて、思わず呟いた。
「物足りない……」
「あ゙? 何だと?」
真後ろに殺気を感じて、鳥肌が立った。
どうやらこのビールの中心的開発者、久遠さんの逆鱗に触れたらしい。
「まぁまぁ」
と彼をなだめてくれたのは、三国主任。
私の感じた物足りなさを、彼は上手に説明してくれた。
「実は僕もそう思っていたんだよ。
夏に売りたいビールだから、喉越しは一番大事だ。
でも、コクとのバランスを考えないと、印象の薄いビールになってしまうよ」