ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


話し掛けてきたのは、さっき保管庫に入ってきた、顔しか知らない他部署の男性。



「聞いてる?」との言葉から、
ちょっと前から話し掛けていたみたいだけど、

全く聞いていなかった。



それは私の集中力が凄いからではない。


単純作業の繰り返しで、脳の働きが鈍くなっていたせいだと思う。



ビクッと肩を震わせ驚いてから、

聞いていなかった失礼をお詫びした。




「ごめんなさい!聞いていませんでした!

あの、もう一度お願いします」




彼は同期ではない。


多分、2〜3年先輩だと思う。



後輩の私の非礼に怒ることなく、
彼は笑って言った。




「ホッチキスの替え針が欲しいんだけど、場所分かる?

そう言ったんだよ。

随分仕事熱心だね。エライなぁ」




仕事熱心ではない。


この仕事を嫌だと思って、心の中は不満と文句ばっかりだ。



それでも褒められると、単純な私は喜んでしまう。



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